誤送金によるトラブルについての雑感

山口県のとある役場が、新型コロナ対策関連の給付金として、4630万円を誤って町内の24歳の男性の口座に振り込んだことが問題になっています。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20220516-OYT1T50200/

事件をめぐってさまざまな憶測が語られ、法律の専門家による解説や、各種コメンテーターがこぞって発言に乗り出すなど、完全にお祭り状態となっています。

筆者は、2005年に起きた「ジェイコム株大量誤発注事件」と呼ばれる事件を思い出しました。
これは、みずほ証券の担当者が「61万円一株売り」とするところを「1円61万株売り」と誤ってコンピュータに入力してしまったことを発端とし、さらに東証のシステムのバグにより取り消しが受け付けられず、みずほ証券が400億円を超える損失を被った事件でした。

この人為的ミスに乗じて億単位の利益を手にした投資家が有名となるなか、みずほ証券が東証を訴えるなど泥沼の展開となりました。

不当に得た利益だとは思いますが、法律上不当利得にはあたらず、返還請求がなされたという事実も見当たりません。

今回の役場による誤送金については、男性は不当利得を得たと言え、返す義務が生じています。さらに、誤って送金された口座からお金を別のところへうつす際に、銀行に対する詐欺罪が成立するようです。自分のお金ではないと知りながら、さも自分のお金であるかのように操作しているからです。

他人のミスに乗じて不当に利益を得る、という点では2005年の事件と同じですが、法的な行方は全く異なるものになるでしょう。

男性側も役所側も、双方ユーチューブチャンネルを開設すればいろいろ元がとれるよ、なんて著名人が発言するのも、今の時代を表しているなぁ、などと感じ入ってしまいました。

お金を役所に返す手続きをするために、男性に丁寧に謝罪もせず、わずらわしい手続きにつきあわせて問題児扱いする。そのことで男性もいろいろと不利益をこうむっていそうです。

どうも役所側の対応というのも誠実でないところが多々見受けられます。

だからといって、返さない男性が悪くないということは絶対ありえません。

しかし、わたしが思うのは、「どんなことでもしっかり誠実に行う」という精神というかこころの持ちようが、今この国ですごくないがしろにされているな、ということです。

盛り上がればなんでもいい、儲かればなんでもいい、という風潮、誠実に生きていなどいたら痛い目を見るしかない世の中が、すこしでもいい方向に向かえばいいのにと思います。

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