『草原の実験』(2014)は、アレクサンドル・コット監督によるロシア映画。
日本では2015年の9月から公開されました。
美しい少女とそのお父さん、少女に片想いを寄せる幼なじみの少年と青年。
登場人物はこれだけです。
しかも全編せりふがありません。
親子の穏やかな暮らし、夕日を見つめるまっすぐな眼、なんということもない仕草。
どこまでも広がる地平線と、ひたすら長閑で平和な草原が、美しい映像で現れます。
一切のせりふを排し、映像と音とで見せる作品なのです。
ひたすら美しい画がつづくので、それはいいのですが、退屈さを覚えたお客さんもいたようで、ラストを観ずに退席された方もいらっしゃいました。
しかし!
ラストを観ずに帰ってしまうのはとんでもないことです。
わたしは非常ににぶく、「ああ、そういうことか」と驚嘆してしまいましたが、一緒に観た家族は初めから予想がついていたようです。そちらのほうが普通なのかな。
現在となってはほとんど黙示録的というか、著しく複雑な感情になってしまいます。
力をもった作品というのは、ずっと伝え続けるものをもっているのだろう、と思います。
今という時代に強く共鳴する、しっかりとした作品です。
おすすめです。