著者ペール・ラーゲルクヴィストは、スウェーデン出身の詩人・劇作家・小説家です。
19世紀末に生誕し、20世紀はじめから20世紀後半にかけて活躍しました。1951年度のノーベル文学賞を受賞しています。
伝統的なキリスト教の教育を幼少期から受けた影響で、キリスト教にまつわる人物を通し、人間の善悪の問題を普遍的な視点から描くことを生涯つづけました。
バラバは、新約聖書の福音書に登場するユダヤ人の強盗・囚人の名です。イエスの代わりに恩赦を受けて釈放された罪人バラバから見たイエス、そして信仰とは何かという問題を、真摯に問いかける作品です。
あっさりとした描写を特徴とし、素朴な筆致で人物や背景のありようが描かれています。
ですので非常に読みやすく、難しく感じるところもないまま読み切れてしまいます。
にもかかわらず、問われている内容は非常に真剣なものであり、人生のなかでいろいろな状況から思い出されるような、深いものがあります。
バラバは果たして改心したのか、信仰の道に至ったのか、という疑問がよぎるでしょう。
小説の最後はぷっつりときれて、読者は放り出されたような気分になるかもしれません。
大団円などもないので小説に娯楽しか求めない方には向きませんが、しっかりとした内容のある小説を求める方にはおすすめできる、と断言します。