岩田聡さんは、2002年に任天堂の社長に就任され、ニンテンドーDSやWii
といった革新的なハードを世に送り出された方です。
本書は、コピーライターの糸井重里さんのほぼ日刊イトイ新聞(ほぼ日)と任天堂公式
ページに掲載された記事から、岩田さんのことばや思いを再構成したものです。
本書を読んでいると、岩田さんのお人柄をうかがうことができて、背筋がしゃんとなり
やる気がでたり何か素直な気分になることができます。
信頼される、ついていきたくなるリーダーだなと、ことばをうかがっているだけで感じます。
いくつか岩田さんのことばを引用します。
”ちいさいころの私は病弱で喘息もちで、
転校したあとにいじめられっ子だったこともありました。
そういうときに、弱者の立場をけっこう経験しているんです。(中略)
わたしはそういうところでの経験が絶対に捨てられませんし、
また、むかし、たいへんだったことに対して
うらみを晴らすというような気持ちがほんとにないんです。”
”仕様を決めるときに、ほんとうに大事なことは、
「なにを足すか」じゃなくて、
「なにを捨てるか」
「なにをやらないと決めるか」だというのを
すごく実感しました。”
”たしかに、わたしは困っている人がいたり、そこに問題を抱えている人がいると、
その問題を解決したくなるんです。正確に言うと、目の前に何かの問題があったら、
「自分だったらこうするだろうな」というのを真剣に考えずにはいられない。
助けるというよりは、当事者として真剣に考えてしまう。”
通読して感じるのは、問題を見つけ、分析し、解決したいという飽くことのない情熱
です。問題を解決するために、仮説を立てて検証するトライアンドエラーをくりかえす
ことを、しんどいと思っても努力をいとわない姿勢です。
宮本茂さんや糸井さんが見た岩田さんも語られており、素晴らしいお人柄や仕事の姿勢、そして、肩ひじ張らずに哲学を学べるところがあります。
もちろんこうはなれないけれど、ほんのわずかでも近づきたい、と思わせてくれる良書
でした。